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『永遠の0』 読書の会

既に200万部突破の売行で、読んだ方も多くいらしゃると思われる百田 尚樹著『永遠の0』。昨年の夏に同僚に紹介されて読み、最後に涙が止まらなかった感動の一冊。この本の読書会を5月に開催いたしました。


当日参加出来なかった方のために、Facebook上で、"投稿でシェア"という試みも行い、投稿で第二次世界大戦に関する参考図書、お薦めの本のご紹介もいただきました。


"平和を意識するために最も影響力を持つフィクションの中の一冊"だと思い、WEBでも読書会のレポートをUPします、共感の輪が広がる事を願って。((((o゚▽゚)o)))♪

 

【開催日】2013年5月19日(日) 14:00~16:00
【場所】日比谷図書文化館 B1Fライブラリー ダイニング日比谷
【参加者】7名

 

『永遠の0』 読書の会のレポート

 1.気になった登場人物
 2.印象に残った場面
 3.『永遠の0』の感想
 4.第二次世界大戦に関する参考図書、お薦めの本

読書会,永遠の0,東京、日比谷図書館

『永遠の0』 読書の会のレポート1 「1.気になった登場人物」 敬称略、ご容赦願います。

 

A:「景浦(元ヤクザのおじいちゃん)。好感の持てるタイプではないが、裏ヒーローとしての存在感は大きい。」戦後に祖母を助ける。
A:祖父。許嫁を空襲で亡くし、宮部の想いを受けて、祖母の行方を捜しあて、時々祖母と母に会いに大阪まで通う。
 →宮部は生き残った人達を通じて、妻子を助けていたのではないか、とも思う。

B:谷川(元海軍中尉)。第七章:当時の軍部内での序列関係。席次、日本海軍では海軍兵学校の卒業成績で出世が左右された。帝大卒のエリート達の官僚社会、差別あり。
 →現在の官僚組織に似通っている
陸軍大学校出身者、少尉と校長先生、将軍と衆議院議員が同等の階級社会だった。終戦の年の特攻の大部分は学徒兵(予備学生や若い飛行兵)が中心。
 →軍部に問題があったのでは?

C:武田(元海軍中尉、一部上場企業社長)と高山(新聞記者、姉の婚約者)。
高山について→すべてを知っているような気になって、当時を論じてほしくない。

D:宮部、零戦パイロット、主人公の本当の祖父。
「熟練パイロットなのに、どうして特攻として出撃命令が出たのか??」

F:健太郎、主人公。「司法試験に何度も落ち、年々成績が悪くなり、フリーター状態の境遇に現代の若者の姿が重なった」

G: 武田(元海軍中尉、一部上場企業社長)
「奥さんの深い思い遣りと理解にジーンときた。」

『永遠の0』 読書の会のレポート2 「2.印象に残った場面」 敬称略、ご容赦願います。

 

G:「p555、傷痍兵の姿。戦後の復興で賑わいを見せている風景と戦争で傷を負った兵士とのコントラストはこたえた」
 「私が子供の頃、駅前にいらっしゃいました。入れ物を前に置いて」

F:ガダルカナル-日本が追い詰められる戦い方
→敗戦色が濃くなっていくのがよくわかる
 「飛行中、長距離移動中のトイレとかどうしたんですかね?」
 「当初は戦争は短期決戦の計画だったようだ」
 「戦いが長引いたのは軍部の影響力?」
 「米軍が零戦の機体をアリューシャンで回収、高性能な機体に驚いたとか?馬鹿にしていたジャップがこの恐るべき機体を作ったと言って。」
→この時点で零戦攻略方が編み出された 3つのnever

D:「なぜ特攻として出撃命令をうけたのか。ベテランパイロットを一度の飛行で死なせるなんて、おかしくないか?」
 「海戦は、空母を沈めたもの勝ち」
→なるべく空母船に近づけるように腕の良いパイロットを出撃させた?
 「ミッドウェー海戦では、空母4隻が沈没。海軍はその事実を隠すため、生き残った搭乗員達を軟禁していた」

C:9章の武田と高山の会話 p420~
 高山「特攻はテロ、特攻隊員は一種のテロリストだと思う~」
 武田「我々は洗脳などされていない!~特攻員達は、~日記や遺書の行間に思いを込めて書いた。読む者が読めば読みとれるものだ。~」
 「~貴様は正義の味方のつもりか。私はあの戦争を引き起こしたのは、新聞社だと思っている。~」
→「武田の言葉を借りて作者が伝えたかったメッセージだと思う。対して高山は現代人の奢りの代表の様な主張をする。」

 

-check-当時を知らない者に何がわかるか?戦争賛辞への歩み
 五・一五事件
 二・二六事件
 以降、軍部の突出に刃向かうものがいなくなった。
 「軍国主義一色に染まっていく過程がわかりやすく書かれていますね」
 「特攻("カミカゼスピリッツ")はアメリカの9.11の行為と同じ。但し、その行為に至った背景やイデオロギーは全く違うと思う」
→国家vs国家、宗教過激派vs一般民衆

→戦時中を実体験した人間と非体験者で資料から情報を垣間見た人間とは物事の解釈に濃淡がある。特定の情報で、限られた角度の狭い視野で物事を判断すべきではない。

A:p446 鹿児島国分基地
 「年老いたご夫婦。一人息子が特攻で出撃するので、最後に一目会いに来たが、息子は出撃した後で、母親はその場にくずおれてしまった場面。実際他にもこの様なご家族はいたはず、涙が出ました。」
→死なせるために息子を大切に育てたわけではないはずなのに・・・。

B:「『永遠の0』と『壬生義士伝』が重なった」→軍人魂と武士魂?

 「お薦めの本は学徒兵の遺稿ならば『聴けわだつみの声』、特攻の話ならば、『雲の墓標』阿川 弘之 」
 「桜花の事をこの本で初めて知った。スミソニアン博物館でBAKA BOMBと紹介されている事を知って、ショック」
 「当時の米軍は桜花のことをBAKA(fool,idiot,stupid)と言って、日本を馬鹿にしていたらしい」
 「当時の米国と日本ではGDP差が大きかった」

 

-check- 桜花
http://www.youtube.com/watch?v=uSEzyWua4a0

Yokosuka MXY7 Ohka rocket planes, launched from bombers, were first deployed in kamikaze attacks from March 1945. U.S. personnel gave them the derisive nickname "Baka Bombs" (baka is Japanese for "idiot" or "stupid").

 

ここで原爆の話が出て、初めて知った事実

長崎への原爆投下について、長崎に原爆を投下したのは「ボックスカー」という名の爆撃機で

「エノラゲイ」ではなかった。第一目標は小倉であって、9日の午前は霧のため視界が悪く、

原爆投下目視確認に失敗し、第二目標の長崎に切り替えた。この時の投下の目印になった

のが浦上教会(カトリック)浦上天主堂だったという。

「投下担当者はプロテスタントだったんですかね?」の発言あり。

 

-check-
浦上天主堂は当時アジア最大のキリスト寺院。江戸時代に弾圧された隠れキリシタンの過去を持つ

日本のキリスト信徒が建てた最大25mの高さを誇る東洋一の教会。

なぜ米が長崎のキリスト教地区に原爆を投下したのか、またなぜ長崎には"原爆ドーム"が残って

いないのかなど戦後処理の中で有耶無耶にされてしまった事柄に気づかされた。

 

-check-
「原爆投下は米国にとっては、かなりトラウマ」から、長崎の原爆投下を調べると更に気になる事象が。

長崎原爆、浦上天主堂のその後を知るには↓へ
http://t3mi.exblog.jp/13366829

原爆について関連書籍
『ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」』高瀬毅
『黒い雨』 (新潮文庫) 井伏 鱒二

読書会,東京,日比谷図書館,都内

『永遠の0』 読書の会のレポート3 「3.『永遠の0』を読んで、全体的な感想」

 

G「この時代、もし自分が特攻隊員だったらの視点で見ると、男としてググッとくるものがある。現代の男性に読んでほしい」
 「宮部さんのように命を預けたいと思える上司、現代ではなかなかいない」

F「すごい世界だなと思った。戦況や環境に左右される時代。今の自分はもっと出来る事、この時代まだまだあるじゃないかと考えさせられる。身が引きしまった。」

D「戦争を終わらせる方法、自分の国の実力を知らず、分からずに軍部の意のままに進めてしまった、進められたのが残念なところ」
 「この本はぜひ自分の子供に引き継ぎたい」

C「重い内容。自由ってなんだろう、非日常的な事を考える体験ができた」

B「とても読みやすい、戦争の時代背景がコンパクトに伝えられている。大戦下の日本の事を知る際のガイドラインになる内容だと思う」

A「戦争をして良い事は一つもない。戦争で勝てば領土や経済水域が拡張され、(大きくみると)戦勝国は利益があるのかもしれない。しかし、戦争がある時いつも必ず犠牲になるのは個人の幸せ。そして戦う人たちの支えになっているのは家族愛だったり、友愛だったりする。同じ過ちを繰り返さないように、後世にこの事実を正確に伝えなければいけないと思った。」

E「人として自分自身の着地点を見つける事は大事。終身、身を納める場所、時、立ち位置をよく考えてこれからの人生を見つめてほしい。」
 「女性はもう少し女性にしかできないことを大切にしてほしい。最近の男はダメだけど(笑)・・・女性は女性にしかできないことがたくさんある。それを大事にしてほしい」

 

歴史は、勝者や権力者を中心に記録されていくもの。本当の真実は何だったのか、その時代の人々にしか分からない。語らなければ、伝えなければ、二度とあの不幸な時代を繰り返さないためにも。そろそろ人類は戦わずして、共存共栄を築くスキルを確立すべき時ではないでしょうか。

『永遠の0』 読書の会のレポート4 「4.お薦めの本」 1.~3.で紹介できなかったお薦めの本リスト

投稿してくださった方々のお薦め本です。

 

『沖縄 悲遇の作戦 : 異端の参謀八原博通』稲垣武(光人社NF文庫)
映画『硫黄島からの手紙』でも知られるようになった陸軍中将・栗林忠道(1891-1945)は、兵士たちに玉砕を禁じ、最後まで無駄死にすることなく戦う作戦を取ったことでも知られている。また彼は、日本陸軍のなかでも数少ないアメリカ留学経験もある知米派の軍人であり、アメリカの圧倒的な物量と輸送力を早くから理解していた。
話は変わって太平洋戦争で唯一の陸上戦が行われた沖縄でも、栗林忠道と同じようにアメリカ留学経験もある知米派の軍人がいた。彼は圧倒的な物量と輸送力を誇る米軍に対し、兵士たちに玉砕を禁じ、最後まで無駄死にすることなく戦う作戦を展開し、米軍を戦慄させていた。彼の名を陸軍高級参謀・八原博通(1902-1981)という。栗林忠道は広く知られているが、八原は知る人ぞ知る存在だ。それは何故か。八原は所属部隊が壊滅した後、自決した上官の命を受け、戦訓伝達のために民間人に変装して脱出を試みるも失敗し、米軍の捕虜となったからである。
それもこれも「生きて虜囚の辱を受けず」という日本軍の軍人訓のせいで、今もなお彼の評価は低い。兵士たちをまるで将棋の駒のように扱った大本営と、死と隣り合わせの戦場で戦う兵士。戦場で生きるためには狂気に陥らねばどれほど苦しかっただろう。しかもそれが敵(アメリカ)を誰よりもよく知るものであれば尚更だった。『永遠の0』を読みながら、私には宮部久蔵と八原博通が重なって見えていた。

 

『夢声戦争日記 抄 敗戦の記』(中公文庫クラシックス)
活動弁士、俳優、随筆家などマルチタレントの走りともいうべき徳川夢声(1894-1971)が記した膨大な日記の一部。文庫本で全7巻に亘る『夢声戦争日記 (中公文庫)』を一冊にまとめた抄録版。7巻本と比較すれば物足りなさは否めないが、それでもコンパクトにまとまっている一冊。ここには戦況報告に一喜一憂する庶民としての徳川夢声がいる。現代から眺めれば、あのような無謀な戦争に踏み出した国家を信じているとはなんと愚かな、、、という感想を持つだろう。しかし、ひとたび戦争となると、国民の大部分は戦争に加担せざるを得ない。鬼畜米英、撃ちてし止まん、進め一億火の玉だ、五族共和、大東亜共栄圏、、、憲法改正必至と声を挙げる権力者と、その権力者に賛同し改憲を推進しようとする多くの国民がいる。権力者の暴走を抑えるための憲法を、その権力者みずからが改正し条件を緩くしようと言う。
アベノミクスなる「不況の特効薬、のようなもの」の効果を熱心に唱える人びとが、この日記の中にいるのです。

 

『南の島に雪が降る』加東大介(ちくま文庫)
戦後の日本映画でバイプレイヤーとして大活躍した加東大介(1911-1975)は、戦争中、陸軍軍曹加藤徳之助としてニューギニア戦線で戦っていた。しかも陸軍演芸分隊としてである。時に昭和19年、日本の敗色濃厚な南方のジャングルで戦う日本軍兵士たちにも疲労の色が濃かった。かれらをなんとか元気づけようと編成された演芸分隊には、役者、三味線弾き、浪花節、歌手、舞台美術、脚本家、、、できますものは『瞼の母』『国定忠次』『父帰る』といったお芝居から日本舞踊に浪花節、小唄、端唄、長唄、流行歌、、、かれらが演じる演芸を観て兵隊たちは泣いたり笑ったり。
ある日時代劇の舞台で雪を降らせる工夫をしたところ、これが大評判となる。遠い遠い故郷を思い出す雪、舞台に降る雪景色の中で繰り広げられるチャンバラが(たとえそれが作り物の雪景色でも)兵隊たちの心を捉えて離さない。ある日のこと、いつもならワーッと歓声があがる芝居なのに、客席がしーんと静まりかえっている。聞いてみると今日の観客は東北出身の部隊だという。みな雪景色を観て感極まって涙ぐんでいた。さらに、、、飄々とした文章で綴られる感動の戦記。
→映画も感動的な内容だった事を覚えています。

「その他戦争文学、ルポ、随筆と堅苦しくないものを選んでみました。」by Sさん

 

『シベリア物語』長谷川四郎・・・シベリア抑留生活を静謐な文学に昇華させた名品。悲惨な体験のはずなのにそれをあからさまに書かない技が光る。日本文学離れしてます。

『極光のかげに』高杉一郎・・・ラーゲリ(収容所)の生活を淡々と描いて名作。戦後のソビエト礼賛を打ち壊す力を持っている。

『長春五馬路』木山捷平・・・敗戦後、満洲国の首都・長春で、帰国を夢見て必死に生きた庶民の哀感を描く。想像を絶する貧乏を生き抜いたニッポンのオヤジ木山捷平の復権を祈る。

『断作戦』古山高麗雄・・・地獄のような中国雲南戦線を記録する戦争文学の傑作。それにしても活字で戦争を読むことはなんともどかしいのだろう。

『ノモンハンの夏』半藤一利・・・大日本帝国関東軍作戦課の超エリートたちが、かくも無残な悲劇を招いたのはなぜか?国防軍創設に賛成する現代の若者よ、戦場で使い捨てられるのは兵士なんだ!

『時刻表昭和史』宮脇俊三・・・戦時下で鉄道に乗るとはどういうことか。元祖乗り鉄の著者が記した昭和戦前の鉄道史。

『三文役者あなあきい伝』殿山泰司・・・私が敬愛して止まぬ役者であり物書きのタイちゃん自伝。タイちゃんは戦争に行ったんだ。そこで何を見たんだろう。希有なバイプレイヤーの自伝であり、日本映画史、演劇史でもある名エッセー。

『与太郎戦記』春風亭柳昇・・・えー、私は春風亭柳昇と申します。今や我が国では春風亭柳昇といえば、、、私ひとりでございます。こんな私もかつては兵隊さんだったんですよ、戦争というのがどういうものか、一席「お笑い」を申し上げます。

『きけ わだつみのこえ―日本戦没学生の手記』(岩波文庫) 日本戦没学生記念会 (1995/12/18)

『雲の墓標』 (新潮文庫) 阿川 弘之 特攻隊の事を知りたい時は、この本がお薦めといわれていたそうです。

『黒い雨』 (新潮文庫) 井伏 鱒二 広島の原爆被爆者を描いた名作。映画でも田中好子が好演し、第42回カンヌ国際映画祭 高等技術委員会グランプリ受賞した。

『春の城』 (新潮文庫) 阿川 弘之 食べ物の有難味が分かるかも

『ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」』高瀬毅 長崎の原爆投下あと、日米間で何が起こったのか。我々が"教訓"として残すべき遺産が失われてしまった経緯が分かります。

 

以上、ご協力いただいた皆さん、本当に有難うございました。★(*^▽゚)v

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